『楽園のカンヴァス』(原田マハ)
僕は別に「原作→テレビドラマ→映画化」の流れを頭ごなしに否定するつもりはない。
いままで観たことがある作品のなかで、これといったものに出会った経験がたまたまないだけであって、それはつまり、褒めちぎるに値する作品との遭遇経験がないのは私の力不足であり、役立たずであり、愚鈍さのあらわれであり、作り手および演者の責任はこれっぽっちもないなんてことは思ってないよ。つまり“ある”と思ってるよバカヤロウ。
映画なんてのは、1500円やら1800円やら、安い日を狙っても1000円はする娯楽産業なのですよ。
テレビ前にゴローンとなって、ぶちょお〜っつってゴロゴロしてるようなおせんべボリボリおしりもボリボリ的なテレビドラマを映画化したところで、見ず知らずの大勢との共有体験をなかば強制的に生み出す映画っつー暗闇空間と相容れるわけがないのだよ。
テレビと映画が同じ作り・見せ方でいいわけがないのだよ。そんなのはありえないのだよ。

- 作者: 原田マハ
- 出版社/メーカー: 新潮社
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なんでまた『楽園のカンヴァス』の入りがこれかって、僕は非常に懸念しているのです。直木賞ノミネート作品を。
どこかのインタビューで作者が「ダ・ヴィンチ・コードに影響を受けた」と言ってたらしいです。さもありなん。
要は映画化される気がするんだ。直木三十五賞をとったら確実だと思うのだ。2時間スペシャル版から始まり、映画化へと一気に話が進むんじゃないかって懸念だ。
読み進めるほどに受けたうちの印象は、登場人物の描き方が前半と後半で大きく変わってきて、だんだんと“顔が見えてきた”のです。
よくも悪くも感情移入しやすく、バックグラウンドが見えてきて、おれはそこになにも感じなかった、つまりは薄っぺらさを感じたわけだけど、まあそれはよいのだけど、歴史の授業が好きな人、または歴史の一ページに自分がはさまっているんだって感覚を抱きつつ毎日を過ごす人は、心地よく読めると思います。
絵なんぞわからなくても、ルソーもピカソもMoMAにも興味がなくても、事実こういう絵かきがいて、一枚の絵画の裏側にはいろんなストーリーが絡み合っていることに「そりゃそうだよな」って人は楽しめると思います。確実にフィクションですけどね。
ちなみに映画版『ホタルノヒカリ』は、テレビ版でがんばってくれた綾瀬さんへのご褒美として、ローマ撮影に連れていってあげただけのどん底クラスの糞映画と聞きますので、逆に興味があります。
なんて映画にならないよう、お願いしたいのです。